大動脈解離

どんな病気か
大動脈の壁が破れてしまい、壁が内膜と外膜とに分離されてしまう病気が大動脈解離です。なんの前触れもなく突然に発症することが多く、その場合は急性大動脈解離と呼ばれ、一刻も早い対処が必要な循環器の救急疾患です。
病院への到着前に20%以上の方が死亡するという、大変恐ろしい病です。
症状の現れ方
急性大動脈解離が起こった時には、突然の激しい胸や背中の痛みが走ります。高血圧がある人に起こりやすいといわれています。
私の場合は日曜の午後、仕事は休みでしたがトラブルが発生し自宅でパソコンの前で処理に追われていました。ちなみに私は愛煙家で休みの時のトラブル対応にかなりストレスを感じていました。つまりタバコを吸いながら対応をしていました。
午後三時過ぎにやっとの事で対応が終わりデスクの前で伸びをした瞬間、私の背中に痛みが走りました。
それは生まれて初めて感じる地獄の痛み
急激に激しくなる痛みに私は何とかリビングまで這って行き、家族に救急車を頼みました。救急車か到着する間も痛みはどんどん酷くなり恥ずかしい話ですがのたうち回りました。
救急車が到着し病院まで約10分、到着しても痛みは収まる気配はなく、緊急外来のお医者様達の会話も朧気に聞こえました。
・家族に『同意書』の説明をする ⇒ これは万が一副作用の危険性のある「造影剤」を投与する同意だったようです。CTで体内をより分かりやすくする為に。
・服を切っていいか ⇒ 私の身体を動かす事自体が危険なので服は切られてしまいました。
どうも会話を整理すると原因が特定できない様でした…私は痛みで意識を失いました。この時に人間は痛みで気絶する事があるのだと実体験で知りました。

そして次に気がついた時は集中治療室のベッドの上でした。その時には痛みは消えて不思議と意識もすぐにはっきりしてきました。でも身体は仰向けから動けないように固定されていたのです。自分の状況に困惑する私にお医者様が近づいてきて説明を始めました。
大動脈解離だと…私は始めて聞く病名に戸惑い、こんな状況なのに仕事を休めない事情をお医者様に話していました。痛みが引いていたので私は全く自分自身の身体=生命が依然として危機に晒されている事を理解していなかったのです。
治療の方法
大動脈解離は発症する部分で対処方法が変わる場合があります。
心臓から出るすぐ上の上行大動脈に発生した場合は、スタンフォードA型と呼ばれて死亡する危険性が非常に高く、緊急手術が必要になります。心臓の緊急手術が実施できる病院に搬送する必要があります。
対して大動脈解離が上行大動脈にない場合はスタンフォードB型と呼ばれ、血圧を下げる内科的治療で対処できる可能性があります。しかし、B型でも必ずしも手術しなくていいとは限りません。
私はスタンフォードB型の大動脈乖離でした。その為手術を行うかはまだ判断できていない状況でしたが、集中治療室で私が聞かされた状態は恐ろしいものばかりでした。
・「裂けてしまった大動脈の内壁に血液が流れ込んで固まることで「血の蓋」となりつつあるが、身体を動かすと裂け目が拡大してしまう危険性があるので首から下は一切動かせない事。
・心臓から左足に続く欠陥が裂けてしまい、左足への血流が弱くなっており、最悪は左足が壊死 ⇒ 切断の可能性もある事。
・状況によっては手術が必要であるが、とてつもなく危険な大手術になる事。
・私が運びこまれたこの病院には『心臓欠陥外科』が存在していないので月曜になったら協力関係にある大学病院に今後の治療の相談をする、との事。
私がこの時点で運が良かったのは緊急手術とならない可能性が高い「スタンフォードB型」だった為に命を拾った事と大学病院から出向として来ていたお医者様がこの日は当直で『大動脈乖離』を疑って緊急処置をしてくれた事でした。
急性大動脈解離は、専門的な病院で適切な治療を受けないと突然死する危険性が高く、『心臓血管専門医』の診療が絶対に必要となります。日本人の循環器疾患による突然死では、心筋梗塞に次いで2番目に多い死因とされていますから。
この次は集中治療室から退院までをお伝えする予定です。
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