【別冊】ルルナル『朗読の部屋』短編の間百八十九夜

 【別冊】ルルナル『朗読の部屋』短編の間百八十九夜 

ルルナルの『朗読の部屋』短編の間 百八十九話を公開しました。

朗読した話は、

『隣の部屋の電話』

電話は身近なアイテムですね。特にスマートフォンは肌身離さずに持っている方も多いのではないでしょうか。

そんな『電話』の怖い話をお届けします。


【進化した電話】

俺が今の機種の前に使用していたスマートフォンの話だ。

その機種はかれこれ三年以上使用していて、古いけど性能的には問題がなかった。電池パックだけは一回交換したけど、亡くなったじいちゃんが当時買ってくれたスマホだったから尚更大切に使っていたんだ。

でも先月、俺はついに機種変更をした。機種変更って少なからずワクワクするだろ? 新しい機種に魅力を感じたり、それまでの機種が壊れたりと理由は色々とあると思うけど。

俺が機種を変更した理由が少し変わっているんだ。

半年くらい前に付き合っている彼女が変な事を言い始めた。

「夜中に俺からメールが頻繁に来るようになった」と。

彼女とのやり取りはラインが殆どだし、本当の意味でのEメールって基本的には使用していないんだ。

「夜中? 覚えてないなぁ…」

「ええっ…ほら見てよ」

見せられた彼女のスマホの受信画面には深夜二時前後に複数回、俺からのメールが表示されていた。

「しかも本文が意味不明だし」

『いせのきぜいすのこら゛いきまら゛すちのせ巣この水せちのきぜわいすのせのこせはちらますにくならちきくす』

「なんだこれは?」

メールの本文は全てこんな感じて意味不明だった。結局は俺が寝ぼけてスマホを操作したのだろう、との事になったのだが。正直釈然としなかった。

そんな事が数日続いて、夢遊病扱いされてしまった俺は大学の休み前日に一晩中起きて、自分を監視する事にした。これでメールが送信されれば少なくとも俺は操作をしていない事になる。

この日は昼過ぎに家に帰り、雑誌を読んだり、ネット動画を何気なく観てゴロゴロしていたが、俺はある事に気が付いてスマホを手にした…

翌日。午後から約束していた彼女が俺の部屋に来て、開口一番こう言った。

「ひどいじゃない!なによこれ?」

彼女はスマホの画面を俺に押し付けてきた。

「このブス女! 消えちまえ!」

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そこには午前二時に俺から送信されたメールが表示されていた。

俺は興奮状態の彼女を部屋に入れて、ある事を説明した。

「昨夜さ、気になったから俺のスマホのメール送信履歴をチェックしてみたんだ。送信履歴が一年以上前から全くないんだよ…」

事実だった。メール自体を最近は使用していないのだ、俺が寝ぼけて送信したとしても履歴は残るだろう。

「そんなの…自分で削除出来るじゃん! 私の事が嫌ならそう言えば!」

彼女の怒りは収まらなかったが想定内だった。指摘のとおりに削除出来るのだから。

「そうだな…その通りだよ。信じてくれないかもしれないけど俺のスマホ昨夜から持ってないんだ」

「はあ? どういうこと…」

メールの送信履歴がない事に気が付いた俺は怖くなって携帯ショップにスマホを持っていったのだ。

「現象確認が出来ない、って言われて預かり修理になったけど代替機は借りなかったんだ…」

不気味な沈黙が二人の間に流れた。彼女のスマホに表示される俺のアドレスは間違っていない。明らかにあれのスマホが発信しているのだ。

俺と彼女はそのまま携帯ショップに行って事情を話したが、俺のスマホはまだショップにあり、電池パックを外して保管している状態だった。

彼女は嫌がったが、俺は修理を断り、スマホを持ち帰った。電源を入れて確認したが送信履歴はやはりなかった。

「どうするの?」

「うん…どうしよう?」

二人でファミレスで悩んでいると彼女のスマホが鳴った。

画面を見ていた彼女の顔がみるみる青ざめていく。

『まだ分からないの? 泥棒猫。 お前なんかアッチにふさわしくない…』

俺は反射的に電池パックを外したままの自分のスマホを手に取った。

電源が入るはずのないスマホ。画面上では送信されたメールの削除の操作が勝手に行われている瞬間だった。そして何事もなかったように電源が切れた。

俺は全てを理解した。俺のことを『アッチ』と呼ぶ人間は一人しか思いつかなかった。

一年前に別れた元カノだ

彼女にも話してはあったが、嫉妬深くて俺はかなり束縛されていた。大学で別の女の子と話しただけで喧嘩。スマホも勝手にチェックしてゼミの女の子から電話があったら刃物を持ち出す始末。結局二ヶ月も持たずに別れる事になったのだが、自殺未遂を起こして実家に帰った、と聞いていた。

元カノの生霊なのか? 既に亡くなっていて怨霊なのか? 専門外の俺には分からないがスマホ自体が元カノになってしまっている、馬鹿げているがさんな気がした。今思えば彼女からのラインが観ていないのに既読になっていたり、彼女と写した画像が消えていたりする事があった。その全てではないかも知れないがスマホ=元カノが嫉妬心からやっていた気がするのだ。

今のスマホは一昔前のパソコンよりも高性能というが、人の魂が電気的にCPUに宿るなんてあり得るのだろうか。

俺はスマホは変えたが、新しいスマホに元カノが宿られても困るので古いスマホは破棄せずにお寺に預けてある。彼女にも番号やアドレスを変えてもらったので今のところは変な事は起きていない。

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