【別冊】ルルナル『朗読の部屋』短編の間百八十五夜
2018年3月12日
ルルナルの『朗読の部屋』短編の間 百八十五話を公開しました。
朗読した話は、
『妙な写真』
皆さんは写真はお好きですか?
私は最近デジタル一眼レフのカメラを購入したので勉強したいと思っていますが、
自分が写されるのはあまり好きではないんです。
昔から写真は「魂を吸い取る」なんて迷信もありますよね・・・・・・
【思い出せない同級生?】
たまたまなんだけど先週の週末に高校時代の卒業アルバムを見ていたんだ。
もう5年近く前になる当時の写真を見て、俺はとても懐かしくなった。と言っても高校時代のクラスメートは殆ど地元に進学、就職しているから頻繁に会っているんだけどね。
「部活動紹介」のページを見ると複数の部活動に俺が写っていた。当時の撮影が行われる日に帰宅部だった俺と数人の友人はカメラマンにくっついて周って複数の部活の撮影に紛れ込んでいたのだ。
馬鹿な事してたな。
と当時の事を思い出しながら卒業アルバムを見続けていた俺はみょな違和感に気が付いた。
「部活動紹介」に俺と友人が複数写っているのはいいとして、同じようにほぼすべての部活に同一の人物が写っていた。
男子生徒で酷く痩せている。前髪が長く表情はなかなか読み取れないが、少なくとも俺はこの生徒を知らない。
誰だっけ? こんな奴いたかな?
どう見ても活発なタイプではないと思うが、ある意味で目立つ生徒だったはずだ…言葉は悪いが陰気さが写真からも伝わってくる。俺達みたいにふざけて色々な部活の撮影に顔を出すタイプにも見えない。
ちょうど翌日に高校時代の友人達とのみに行く約束をしていた俺はみんなにも聞いてみることした。
誰も『彼』を知らない・・・
結論から言うと、集まった友人達も記憶になかった。
中には俺と一緒に撮影会を周っていた奴もいたのだが、全く覚えていなかった。
写真に写る『彼』の陰気さも手伝い、飲み会の空気が少し重くなった。
「まあ、三年生とも限らないだろ。下級生かもしれないし」
卒業アルバムの撮影は当然の事ながら三年生限定だが、お調子者の下級生が撮影にお邪魔した可能性はゼロではない。
「そんなタイプには見えないけど…」
『彼』の陰気な印象からそんなお調子者としての部分が感じられないが、各クラスの写真のページにも『彼』を見つける事は出来なかったので、下級生の可能性は確かに高く俺達は無理に納得する事にした。
そして飲み会も終わり、皆で店を出た直後に友人の一人が放った一言が俺達の酔いを一気に醒ます事になった。
「でもさ…運動部と文化部の撮影って同じ日の放課後に別のカメラマンがやってたよな?」
そう。それが理由で俺達も全ての部活の撮影には紛れ込めなかったのだから。
『彼』はほぼ、いや全ての部活の写真に写りこんでいた…。