【別冊】ルルナル『朗読の部屋』短編の間百八十三夜
2018年3月5日
ルルナルの『朗読の部屋』短編の間 百八十三話を公開しました。
朗読した話は、
『リサイクルショップ』
皆さんはリサイクルショップは利用されますか?
色々な考え方があると思うのですが、ホビーを趣味としている私は覗く事がたまにあります。物の再利用というのは考え方としてはいい事だと思うのですが、もしも自分が大事にしていた物や使っていた物が自分の死後に誰かの物になったら・・・・・。
【薄型テレビ】
2011年にテレビが地上デジタル放送、所謂「地デジ」にに変わったのは懐かしい話。
「地デジ」に移行する直前には対応した薄型テレビを買い求める国民で電気屋さんは大忙しだったと思う。僕も薄型テレビを購入する為に何件もの電気屋さんを週末になると回ったもんだ。
高いテレビを購入する余裕があればいいけど、予算は決まっているから範囲内で少しでも大型のものが欲しかったんだ。でもギリギリの時期だったから在庫がない事が多くて困ったよ。
そんな時期に同じようにテレビを探していた友人の話。
友人から「地デジ」対応の薄型テレビを買ったと聞いて休みに見に行くと、40型の大画面の液晶テレビが友人の部屋に置かれいた。しかも国内の有名メーカー製だ。
「40型かぁ 高かっただろう」
「いや、29,800円税込」
あり得ない金額だ。このメーカーでHDD内蔵のこの型なら少なくとも10万弱くらいするはずだ、実際に回っている電気屋ではそうだった。
「中古なんだよ、これ」
「中古…いや新品にしか見えない。製造年も今年じゃないか?」
友人によると大手のリサイクル店ではなく、個人経営のリサイクル店の店頭に並んでいたらしい。
「もう速攻ゲットしたわ。得したぜ!」
薄型テレビ購入で苦労していた僕は正直羨ましかった。個人経営のおじいさんが商品の価値もよく分からずに販売したんだな、と思っていた。
僕はその日は友人の家に泊まる事にし、テレビを見せてもらいながら二人で缶ビールを飲んでいた。
夜の一時くらいかな、3本目の缶ビールを開けて高いけど40型はやっぱりほしいなぁ、と思ってテレビを見ていた時にテレビ画面の端に何かが見えた気がした。
「あれ?」
友人を見ても特に気にする風でもないので、その時は気のせいだと思ったのだが。
「そろそろ寝るか」
簡単に後片付けをし、テレビを消して友人と僕は横になった。
1時間程経っただろうか、僕は「人の声」でを覚ました。
友人はイビキをかいて眠っている。しかし「人の声」は確かにに聞こえる。
数人の男女が何かを話し合っている感じの声だった。
その声は電源が切れているテレビから聞こえてきた
僕は自分が酔っているからだと思おうとしたが、間違いなく画面の消えたテレビからそれは聞えてくる。中古だからな…電源と画面表示が壊れているのかもしれないなと僕はテレビ画面を覗き込んだ。
「えっ?!」
画面が消えているテレビには友人の部屋と覗き込む僕が映り込むはすだ、なのに消えた画面には「見たこともない部屋」映り込んでた。それはどこかの待合室か談話室のように見えた。そしてその空間に7~8人の人間が会話をしていた。その話声が聞こえているのだ。
「何だ! これは?」
思わず声を上げてしまった僕の声にテレビ画面に映り込んでいる人間達が一斉に会話を止めて僕のほうに顔を向けた。
その瞬間、僕は身動きが取れなくなった。これが金縛りなのか、と後で思ったよ。
僕を見つめる恨めしそうな、悔しそうな表情…彼らの寝巻のような服装、部屋の雰囲気、僕は理解した。
病院だ…。
病院の談話室。そこにレクリエーション用として配置されているであろうテレビ…テレビを見ているのだ。そして向こうではテレビ画面に僕が映り込んでいるのだろう。
彼らが一斉にテレビに向かってきた。
僕は動く事が出来ずにいる。そして恐怖の限界に達した時。彼らの言葉を聞いた。
「私達の…テレビ…」
いつの間にか眠ってしまった僕は友人に起こされて目を覚ました。
既に朝になっている。
「おい、大丈夫か? 羨ましいからってテレビの真ん前で寝なくても…」
友人の言葉に返事せず、僕はテレビを改めて調べてみた。
「あった…」
テレビの「脚」の裏にその表示シールはあった。
『2011年1月◇●病院 第一病棟管理』
その病院は医療事故があり、既に廃業していた。どんなルートが分からないがリサイクルショップに流れたこのテレビは入院していた患者さん達には憩いの存在だったのではないだうか。
友人には昨夜の出来事は話したが、彼は今でもテレビを手放してはいない…