【別冊】ルルナル『朗読の部屋』短編の間 百七十八夜

 ルルナル『朗読の部屋』短編の間 百七十八夜 

2018年2月14日

バレンタインデーの今日、ルルナルの『短編の間』百七十八夜を公開しました。

『お狐様との約束』

皆さんも困った時などに自分の中の誰かや、神様等に「○○を断ちます」「△△します」のようにお願いした事はないでしょうか。ルルナルも子供の頃にあるかな…。

今回も朗読とは別に。『約束』に纏わるお話を紹介させていただきます。

子供と大人の感覚の違い、そして言葉の重さ。


『軽すぎた約束』

小学生の頃のお話。

私の町内では町内会対抗のソフトボール大会が毎年、夏休みに行われていました。

都会に隣接した田舎? なので町内に人口は比較的多く、多い年は15の町内チームが作られました。対象は小学四年生~六年生の男子児童。女子児童はバレーボールだったかな。

今では珍しいかもしれませんが児童の父親で野球好き、お祭り好きな人が監督に立候補する事が多かったのです。こんな言い方は失礼かも知れませんが、きちんとしたコーチ経験も当然なく、小学生を従えたがる父親が多かったと思います。これは私が大人になったから感じる事です。

私の友人の町内で監督を引き受けたのは、会った人の殆どが苦手とするおじさんでした。感情の浮き沈みが激しく、子供に対してのあたり方も依怙贔屓の塊でした。私も隣の町内なのですが、その人の娘が同じクラスだったのでよく知っていました。

六年生の年の事。

私の知人は勉強は出来ますが、運動はあまり得意ではありませんでした。過去二回のソフトボール大会ではライトを指定されていましたが、この年は町内で六年生の男児は彼一人でした。町内の取り組みとは言え、子供会としての取り組みなので子供の為のものです。殆どの町内では六年生はピッチャーやファースト、ショート等の観客である父母から目立つポジションにする暗黙の了解がありました。

※ちなみに私は打撃が良かったので四番バッターでしたが、距離があると暴投する事を理由に内野手固定でした。

ポジション決めの前日に友人はその監督にたまたま会って、「今年はピッチャーを頼むぞ」と言われたそうです。友人は大喜びでしたよ、子供にとってソフトボール大会はそれほどに比重の大きいイベントだったのです。

夏休み中の事なので大会前の練習試合の時まで友人とは会わなかったのですが、練習試合で友人はライトを守っていました。

別にライトを馬鹿にしているのではありません、小さいグランドで父母に姿をよく見せたいので内野手でないと見られないのです。

あの時の友人の顔、絶望と仕方なさ、悲しみと憎しみが混ぜ合わさったあの表情を私は今でもはっきりと思い出せます。

友人から話を聞くと、ポジション発表の際、そのおじさんはその友人に一瞥もなく「お前はライト」と言っただけだそうです。

子供心に私も腹が立ちました。大人にとっては軽い言葉、約束ですらなかったのでしょう。でも子供にとっては大事な約束だったからです。

スポンサーリンク

それから時は流れて

私は小学校卒業と同時に引っ越してしまい、以後の町内の事はあまり知りませんでした。今と違って友人達と別れた際に携帯も持っていませんでしたし、引っ越してしまえば疎遠になります。

二十代半ばの頃、監督の奥さん(娘は私と同じクラスだった)と私の母親が電話で会話しており(電話番号を教えていた事も知りませんでしたが)、監督が二年ほど前に亡くなったそうです。その話を聞いても私は何も感じませんでしたし、無関係な内容としか思いませんでした。その年に仕事で小学生時代に住んでいた地区の近くに来たため、帰り道に懐かしくて少し散策しました。そこで偶然ですが例の友人に再会しました。

喫茶店に入り近況などをお互いに報告しあい、終始笑顔だった彼だったのですが別れ際に急に無表情になり、

「あいつ、死んだぜ…」

監督の事だとすぐにわかりました。友人を見ると彼は笑っていました。

友人の当時の悔しさを知っているだけに、私も彼に何も言えませんでした。


いかがでしたでしょうか。

子供と思って軽く考えたのか? 元々が適当に言葉を発してしまうタイプだったのか?

誰にでも好かれるわけではありませんし、どんなに気を付けても誰かを傷つけてしまう事は絶対にあります。だからこそ、意識して相手を傷つけないように言葉も選びたいです。それが例え子供でも。

ちなみに私は昔愛犬を予防接種に連れて行く時、嫌がる愛犬に「まんま」と嘘を言ってしまいました……

スポンサーリンク
パソコンh2上
パソコンh2上

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする